スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

一箱のマッチに思うこと

冬の夕暮れは早い。電気をつける前に蝋燭に火を灯す。マッチをシュッと擦って、アドベントクランツのキャンドルに火をつける。部屋の隅に置いてあるポインセチアも、ぼんやりとした光の中に赤く浮かび上がる。明日はクリスマスだ。

 マッチを擦るたびに思うのは、今もマッチを作り続けている人たちのこと。小さいけれど、私たちの暮らしには欠かせない物だ。たぶんマッチを製造する会社は、いわゆる大企業ではないだろう。勝手な想像だが、家業を引き継いで、より良い製品を作り続けるために、日夜頑張っている小さな会社が目に浮かぶ。日本の企業の大部分は、中小企業だという。マッチだけではなく、いろいろな生活用品が小さな会社や工場で作られているのだろう。大銀行や保険会社ばかりが目を引きがちだが、スイスだって中小企業が主である。スイスも日本も、派手に語られない小さな会社と、そこで働く人たちが社会を支えている。どの企業も何らかの社会的貢献をしていることは確かだが、特に生活に必要な物の生産販売に関わる仕事は大事だと思う。今の時代、IT関係の仕事が脚光を浴びることが多い。GAFAなどはまさに時代の寵児のように言われ、世界を牛耳っている感がある。おかげで一面では様々なことが便利になり、またオンラインの交流が進んでいることは確かだが、人間が有機的存在である以上、第一次産業はないがしろにしてはならないものである。上下水道などのインフラに関わる仕事もそうだ。人は霞を食べて生きていくことはできないのだから。食物を口に入れ消化する。生きる為には暑さを凌ぎ寒さを防がなくてはならない。人間が生身の生き物だという原点を忘れて、経済成長や金融ばかりを語るのは、ちょっと違うと思う。そんなことを、マッチを擦りながら考える。

 ちょうど冬至の夜に、木星と土星が大接近したのに、あいにく空は厚く雲に覆われていて、見ることが叶わなかった。次は60年後だとか。60年後か…。もう自分がこの地上にいないことは確かだが、そのころ地球はどうなっているのだろうか。

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