スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

印象に残ったインタビュー

スイステレビに、Sternstunde (星の時間)という日曜の番組がある。毎週午前10時から午後1時まで、宗教・哲学・芸術と1時間ずつ3部構成で放送する。2020年最後の「哲学の時間」は、連邦内務大臣アラン・ベルセ氏のインタビューだった。連邦内務省保健庁はコロナ感染対策の指揮を執っているが、内務大臣であるベルセ氏はその最高責任者。昨年は彼にとってはハードな一年となったし、今年もそれは続くだろう。インタビューの中で大変だったか聞かれて、生理的に昼夜がわからなくなった時期があったと答えていた。つまり、まだウイルスについてよくわからなかった時期は、寝もやらず対策に忙殺されていたからだろう。でも、彼はそれをただ事実として淡々と語る。家に帰る暇もなかったようだ。「哲学の時間」だから、政治の話ではなくて彼の考え方と生き方についての話が主で、アラン・ベルセという政治家の内面性がわかって印象深かった。

ここでちょっとだけスイスの政治システムを説明。スイスは連邦制で26州(Kanton)から成る。スイス連邦内閣は、連邦議会で主要政党から選ばれた7人の閣僚で構成され、それぞれの担当省庁を受け持つ。そして、それと兼務しながら一年間の持ち回りで大統領を務める。社会民主党のベルセ氏も大統領経験者だ。昨年は、同じく社会民主党のシモネッタ・ソマルガ氏が大統領だった。今年は、国民党出身で経済相のギー・パルメラン氏が大統領に就任した。

さて、話をインタビューに戻そう。いろいろ話があったが、特に二つ印象に残っていることがある。それは、政治家として何が一番大切だと思うかと聞かれて、Empathieと答えたこと。共感力というか他者に感情移入できる力というか、そういった能力だ。もう一つは、なぜ政治家になったのかと聞かれての答え。もちろん、若くして方向を選ぶにはいろいろな要因はあっただろう。ただ、感銘を受けたのは、たぶん人間が好きなんだと思うという一言。受け答えを聞いていると、頭の回転が速くて論理的に考える人だというのがわかる。見終わった後の感想。論理的思考ができるのはもちろんとして、その上に人間に愛着を感じ、他者への共感力がある人たちが政治に携われば、世界はどんなにか良くなっていくことだろう。スイスには、けっこうそういう政治家がいるのではないかと思っているのだが。はてさて、それはスイスで生まれ育ってない人間の、隣の芝生視点なのだろうか。いずれにしても、私たちの生活が政治家とその政治に左右されるのは確かだ。

 

ということで(?)前回申し上げたように、ずいぶん昔に書いて最近出てきた、猫のクロのお話第二弾を載せます。

「クロです。こんにちは。毎日寒~い日が続いてますが、皆さんお元気ですか。ボクは外があんまり寒いので、このところずっと外に出ないで、居間のソファの横の専用ふかふかマットで、まあるくなってることが多い。それで、飼い主さんがテレビをつけたりすると、何となく一緒に見たりしてる。人間の世界では、ここ二週間のうちに暦が変わって新しい年になったんだそうだ。この間は夜中に皆でシャンペンを開けて、「おめでとうございます!」って言ってた。でも、テレビ見てると、あんまりおめでたそうでもない感じだ。どこだかよく知らないけど、新しく戦争が始まったらしいんだ。子供たちまで爆弾にやられてる。全くひどい話だよな。子供は生きようと思って生まれてくるんだぜ。小さな芽が真っ直ぐに育ちたがっているんだ。それを摘むなんて許せないよ。ほんとにボカアあんまり極端な言葉は使わないタイプだけど、こればっかりは許せない。子供は大人の作った世界に暮らすしか生きるすべがないだろ。そもそも、世界の偉そうにしてる「指導者」って連中は、人がこの世に生まれてくる意味をわかってるんだろうか。ボカア伸びをしたりジャンプしたりしている時、元気な身体があるってほんとに有り難いなって思う。その身体を取り上げることができるのは、「神さま」だけだ。人間たちはお互いあっちが悪い、そっちが悪いって、聞く耳を持たない奴が多い。「悪い奴」をやっつけろって言ってる「指導者」って連中は、若い兵隊を送るくせに、自分は危ない所には行かないで、号令をかけてるだけだ。自分が行きたくないなら、行かせるのもやめろってのに。世の中そんなに単純ではないって言う人が必ずいる。ま、狭い庭のことを「猫の額ほどの」って言うくらいだから、自分の脳みその量を誇れるわけじゃあないけれど、ボカア、人間ももっと物事を単純に見ればいいのにって思う時がある。ボクの飼い主さんは、『What a wonderful World』っていう歌が好きで時々歌ってるんで覚えちゃったんだけど、ありゃボクも好きだね。いっぱしのこと言わせて貰えば、こうして生きてるってことだけでもWonderに満ちていて知りたいことがいっぱいだ。人に押し付けられて死にに行ったり殺したりしてる暇なんてないよ。生命は育っていきたいんだもん。それには平和で調和の取れた世界が必要だろ。そうじゃなくなりそうだったら、すみません、私が欲張ってましたって引き下がるのもひとつの道だ。猫だって欲張りな奴もいるけど、その為に殺し合いまではしないぜ。人間の勝手でボク達も住んでるこの世界を壊されたかあないね。ボカア、単純って言われたって、飼い主さんと顔を見合わせて微笑みあったり、(ま、ボクはニャーンって鳴いてるだけにしか見えないだろうけどさ)原っぱを跳び回ったり、時々はお日様に当たって居眠りしたり、そんな小さな幸せを大事にしてたい。ところで、いま飼い主さんがハマっているのは、「篤姫」ってビデオ。この間なんか何時間も見てた。ボクもつい釣られて見てたんだけど、あの篤姫って人はすごいね。何か問題にぶち当たったら、ちょっと見には複雑なことでも原点に戻して単純に考えようとする。自分が間違ってたらそれを認めて、また原点から道を見つけようとする。あの人の大前提は、皆が幸せに生きることだ。ボカア、彼女に惹かれちゃったね。ま、とにかく、ちょっと暖かくなったら、また賢猫の「おやじさん」の所に行って、いろいろ考えを聞いてこようと思っている。では、また。」

それでは、また折を見て第三話を載せたいと思います。では、また!

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