スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

「大人になったなと感じる時」スイスの若者編

今週のお題「大人になったなと感じる時」

ああ、日本はちょうど成人式の季節なのですね。私自身は大人になって幾星霜、「大人になったな」という感慨も遠い昔になりました。そこで今回は、スイスの若者たちがどんな風に社会の中で大人になっていくのか、親の経験という視点も含めて振り返ってみたいと思います。

まずは、スイスの教育制度を見てみましょう。大半が高校に進学する日本の中学生と違って、こちらでは中学2年生はちょっと大変です。というのは、この時期、好むと好まざるとにかかわらず、自分の将来について具体的に考えざるを得ないからです。スイスの教育制度は日本とは少し違っています。義務教育が9年間というのは同じですが、その仕組みは少し複雑になります。

まず、小学校6年間を終えたところで道が二つに分かれます。地元の中学校に行く道と州立の6年制のギムナジウムに行く道。私立の学校もありますが、一般的ではありません。地元の中学校に行く場合も、小学校の時の成績によってABCと三種類に分かれます。この時点では中学A種とB種に行く子が大半で、地域にもよりますが、試験に合格してギムナジウムに行くのはクラスで2人位というところでしょうか。行っても、3ヶ月間の試用期間に合格しなければ地元の中学に戻されます。

次に、中学2年が終わる段階でまた選択肢があります。4年制のギムナジウムに行くか (中学A種に行った場合のみ受験資格がある)、3年まで行って、その後自分の希望の職種の職業訓練を受けるか。もちろん3年の時に進学を選ぶこともできますが、大半は3年の時に就職先を探して、中学卒業後そこで訓練生として仕事を教えてもらいながら、たいていは週1日、職業学校でそれぞれの職種の勉強をします。そして、4年後に国家試験を受けてその職種の資格を取ることになります。いずれにしても、中学2年生は、自分は何をやりたいのか、一度は将来に向けて真剣に道を考えざるを得ません。親と生徒を集めての進路説明会はありますが、先生が生徒個々人の面倒を見てくれるわけではないので、親もなかなか大変です。特に現在は、昔のような経済成長ブームではないこと、また、企業の社会的責任の自覚が薄れていっているということもあって、就職先を探すのがなかなか難しくなっているようです。ギムナジウムに合格して進学した場合も、成績が悪ければ退学になるし、卒業前に行われる大学入学資格試験に受からなければ、社会的な資格としては何もありません。本当に本人にやる気がなければ、親の圧力で無理して合格しても、その後はうまくいくとは限らないのです。総合大学に進む割合は、現在は20パーセントほど。1980年代半ば頃は、10パーセントほどでした。専門大学入学資格者も入れると、40パーセント弱くらいのようです。大学に進むということは、その後アカデミックな職に就くということになります。考えたり勉強したりするのが好きな子、手仕事をするのが好きな子、身体を動かすのが好きな子、子供の適性はいろいろです。好きなこと、向いていることを選んで、手に職を付ける職業訓練の道に進んだ方がいい場合も多いです。その辺の見極めが親子にとって大事になります。最近は、まずは職業訓練生として働き学びながら、さらに週にもう1日授業を受けて専門大学に行くための資格を得る道もあります。とにかく、就職した場合も、国家試験に受からなければ資格が取れず、その後の仕事の選択範囲が狭くなります。ですから、皆一生懸命。学校に行く子も就職した子も、毎日朝早くから夕方遅くまで大変です。お店などで、まだ幼顔の残る若者が、見習生という名札を下げて健気に応対しているのを見ると微笑ましく、頑張ってと応援したくなります。

それから、16歳というのは、親子関係にとって一つの節目です。例えば、親と一緒に電車など公共交通機関で移動する場合など、15歳までは無料ですが、16歳からは大人と同じ料金が掛かります。また、洗礼を受けている子供達は、その教会共同体で16歳から一人前です。アルコールもビールとワインに限り原則16歳から飲めるようになります。ただし、州によっては18歳からにしているところもあるようです。選挙権は、18歳からです。こうして、社会的には大人になっていくわけですが、気持ち的にはどうなんでしょう。息子が18歳になる頃だったか、私は何となく感慨深くて「大人になったねえ」と言ったら、「心はまだ子供で〜す」と、ちょろっと舌を出してふざけて笑いました。16歳から18歳というのはとても多感な時期ですね。身体もまだ成長し続けています。一人前として認められたい気持ちと、何となく大人の世界に入っていくのが不安な気持ち。この時期に友人でも先輩でも、あるいは師でも、いい出会いに恵まれて、たくさん学び吸収していけたら、その後の人生の確かな土台が築けることでしょう。そして、本当の意味で成熟したいい大人になっていけるのかもしれない。子供と若者を大切にする環境は、良い社会をつくっていく基盤になるのではないかと思うのです。 

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