スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

2021私のオンライン元年

今週のお題「おうち時間2021」

2020年春。ソーシャルディスタンス、コロナ感染の世界的な広がりは人々の物理的な接触を絶った。ヨーロッパの国々はロックダウン、日用品以外の店もレストランも文化スポーツ施設も閉まり、人々は家にこもった。ここスイスでは、初夏になって感染が下火になり、気をつけながらも人々は束の間の夏を楽しんだが…。秋も深まる頃、第二波がやってくる。12月半ばからは再びのロックダウンで、レストランや余暇施設などは閉鎖される。今回は、高校までは対策を立てた上で対面授業は行われた。可能な企業にはリモートワークを義務付け、人々は外出を控えるようになった。スイス連邦内閣が節目節目で感染措置戦略を発表し、3段階に分けて規制が緩和されていくことに。一般の店舗の営業が認められ、さらに4月半ばからはレストランの屋外席が解禁になり、文化スポーツ施設も制限が緩和された。ワクチン接種も希望する高齢者にはほぼ行き渡り、これからは若い人たちにも枠が広げられる。予断は許さないが、6月からは大きなイベントの許可も視野に入れているようだ。戦略の第3弾の具体的実施ついては、あと2週間ほどしたら発表される。

人々が気軽に会うことができなくなって、急速に普及したのがオンラインでの交流だ。コロナの前まではZoomなどは一部の人たちにしか利用されていなくて、その存在さえ知らない人も多かったと思う。スカイプはかなり前から使われていたようだが。私がZoomを初めて使ったのが去年の春。予定されていたセミナーが急遽オンラインに切り替わった。まだ慣れていない人も多かったので、主催者が参加者に懇切丁寧に説明してくれた。それからのZoomの伸び様はどうだろう、世界で爆発的に広がっていったようだ。関わっている文化交流団体でも、リアルな催し物ができなくなって、Zoom講演会などに切り替わったし、日本映画上映会も代替策としてストリーミングに。チューリッヒ歌劇場も過去に上映したオペラをロックダウン中ストリーミングしていた。オンラインイベントの良さは、住んでいる場所に関係なく参加して楽しめるということだ。

オンラインで繋がるためにはインターネットが必要だ。パソコンとインターネットの普及は人類に画期的な変革をもたらした。ちょうど我々の世代は、そもそもコンピューター時代到来の前に社会に出たが、人生の円熟期に革命に遭遇し、新しい時代に投げ込まれた。両方の時代の雰囲気を身を持って知っている最後の世代なのかもしれない。すべてがデジタル化していくことにはどうもしっくりこないものはある。デジタルは曖昧さを許さないが、もともと人間はアナログ的な存在だと思うから。「ビル・ゲイツに会った日」という本が思い出される。発売当時、概要だけ見て気になりながらも読む機会がなかった。どういうわけか、あの画期的な年、1995年を振り返るたびにあの表題が頭に蘇る。便利になった代わりに失ったものもあると思う。たとえば、昔は電話案内というサービスがあったっけ。電話線の向こうには血の通った人間がいて情報を教えてくれた。ところが今は、人間にたどり着くまでに無機質な声に様々導かれなければならない。たぶん、若い人たちは電話での問い合わせなどせずに、全部インターネットで調べるかAIに聞くのかもしれないが。だが、人がどんどんAIに置き換えられていって、例えば銀行などは手数料ばかり取られて、結局は顧客が自分にサーピスしなければならなくなっている、と私には見えてしまう。

さて、それはともかくとして、2021年は私のオンライン元年となるだろう。これからを見据えた時、アクティブに付き合っていこうと決めた。まずはプライベートでもZoomを積極的に活用。たとえば、定期的に友人知人たちとのZoomミーティングに参加。興味深いイベントがあれば、それも躊躇せずに参加しようと思っている。チャットのグループにも入れてもらっている。ある意味、ロックダウン中これはありがたかった。リアルで会うことが叶わない中、文字や写真を通してだが近況を伝えあっているので、しばらく会っていないのにそんな感じがしない。ツイッターはもっぱら日本のニュースを知るためにアカウントを持ってはいるが、積極的に発信もフォローもしていなかったので、ずっと停滞中。だが、今年からはもう少し発信をすることにした。極め付けはクラブハウスかもしれない。私はフェイスブックはしていないので、一足飛びと言えるだろう。仕事柄、声とその表現力と可能性に関心があるので興味を持った。ただ、クラブハウスはベンチャーの若い創業者が始めたらしく、まだ発展途上のようだ。クラブハウス人気は、このコロナ禍とは無縁ではないらしい。直接の人間的な交流と繋がりを求める人が多かったのだろう。ただ、今は上り坂だが、もしかしたらこれから少し問題が出てくることもあるかもしれない。それはもちろんどのSNSでもそうだろう。クラブハウスの場合、実名の表記が必須なのだが、ニックネームも併記を認めているという点が綻びになるような予感も微かにある。クラブハウスのような同時性双方向型の交流は、声が文字表現と違って身体に直結しているという特性から対面のようなものだ。つまり、付き合いに際しては名を名乗るべきもの。名を名乗れば自ずと礼儀もわきまえる。とにかく、すべてのものには光と陰がある。それを心得てオンラインをうまく活用していくことが肝要なのかもしれない。昔スイスに来た頃を思えば、日本とも時空を超えて即座に繋がれるなんて夢のようなことだ。

 

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