スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

壮大なロマンを描いた漫画

今週のお題「一気読みした漫画」

小学生の頃は、毎晩のように「お絵描き」をしていた。少女漫画に描かれた長い巻き毛や、夢みる瞳に魅了されて、女の子の金髪の巻き毛のツヤの出し方や、潤んだ瞳の描き方などを何度も何度も練習したものだ。頭の中にストーリーが湧いてきて、時間を忘れて描いていた。特段にお絵描き帳などなかったので、描くのは、親に貰った広告紙や印刷物の裏紙だった。

もう遠い彼方の記憶になるが、水野英子さんの作品が思い出される。何という題名だったろう、週刊マーガレットに連載されていた漫画の数々。そのひとつに、主人公の青年が会うたびに、短い間なのに、女の子が成長している不思議な物語があった。思い出した!「セシリア」だ。毎週、週刊マーガレットが楽しみだった。発売日になると、十円玉を握りしめて本屋さんに走ったものだった。以来、セシリアという名前を聞くと、何だかミステリアスでロマンチックな思いが湧く。のちに、原作となった映画を観る機会があった。「ジェニーの肖像」という映画だった。あれも面白かった。それにしても、水野英子さんの筆致と描写力は、小学生の私を虜にした。「白いトロイカ」という長編物も夢中で読んだ。帝政ロシアを舞台にした長編歴史物。そうだった、ロザリンダの巻き毛に魅了されて熱心に描き方を練習したのだった。話の筋はもうよく覚えていない。けれども、壮大なロマンだった。小学生の頃、漫画家になりたいと思っていた時期があった。自分で物語を考えて、絵を描いて、楽しかった。けれども、中学に入ってからは、もう漫画を読み難い雰囲気になっていた。何よりも、母がいい顔をしない。当時は、漫画を読むのは小学生止まりだった。少なくとも私の置かれた環境では。西谷祥子という人もいたが、彼女は水野英子より少し後の世代の人だ。絵が上手い人だった。その後、青池保子、竹宮恵子、萩尾望都など、幻想的なストーリーを描く漫画家達が輩出しているが、その台頭期に読んだ覚えがない。でも、知っているのだから、いつの頃か読んだのだろうか。それからしばらくして、池田理代子さんの「ベルサイユのバラ」が大ヒットした。実は、それも読んでいない。従姉妹がウチに泊まりに来た時に、夢中になっているという話を聞いた。フランス革命を舞台に、男装の麗人オスカルと幼馴染のアンドレ、マリー・アントワネットとフェルゼンの恋を軸にして、スケールの大きい長編歴史ロマンが繰り広げられれる。漫画は読みそびれたが、映画は観た。宝塚でも大ヒットして、ユーテューブで一部の映像は観ている。

いつ頃だったか、日本に帰省した際に買ってきた漫画がある。萩尾望都さんの「ポーの一族」と「トーマの心臓」の文庫版。彼女の作品は、発想が素晴らしい。文芸ロマンの香りがある。世界観を表現する手段として、小説ではなく漫画を選んだという感じを持つ。漫画には総合的な才能が要る。ある意味、一人で映画作りをしているような。まず、発想があって、筋書きを作って、脚本を書いて、カットを割り当てて、絵を描く。何人かでやる場合もあるのかもしれないが、萩尾さんは一人でこなしているような気がする。個人的なことや仕事のやり方はよく存じ上げないので、何となくの感じで思うだけだが。

水野英子さんは少女漫画界に一世を画し、その後、西谷祥子さん、少し後に萩尾望都さんたちの世代が続いた。思い出せば、子供の頃が甦ってきて懐かしい。

 

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