スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

「爆発」という言葉の考察

今週のお題「爆発」

あらまあ、穏やかならぬ、なかなか刺激的なテーマですこと。どう発展できるか、とりあえず挑戦してみることにした。

まずは、広辞苑から「爆発」の意味を引いてみる。

1)圧力の急激な発生または解放の結果、熱・光・音などと共に破壊作用を伴う現象。急激な化学反応、核反応、容器の破壊などによって生じる。

2)急に激しく起こること。

1番の意味では、中東レバノンの首都ベイルートの港湾倉庫大爆発が記憶に新しい。2750トン以上の硝酸アンモニウムが保管されていた港の倉庫で大規模な爆発が起きたのだ。200人以上が死亡、大勢の人たちが怪我をしたり自宅を失ったりした。政治の腐敗なども絡んで復興が進まず、今も人々が苦しんでいる。人類が引き起こした爆発の規模としては、核爆発を除いて史上最大級だったことが明らかになったのだそうだ。こちらのテレビでも、その映像が繰り返し流れた。今年になってからは、レバノンの経済破綻と国民生活の困窮が伝えられている。その昔、ベイルートは中東のパリとも呼ばれて、華麗で美しい港の町だったという。一時期は在留邦人も大勢滞在していたそうだ。商社マンだった親戚一家も1960年代後半に一時住んでいたことがあったらしい。港の綺麗な景色を背景にした家族写真を見せてもらった記憶がある。

日本では、10年前の福島原発での爆発が大惨事を引き起こした。放射能の問題は今もなお解決されていない。原発の中がどうなっているかは、誰にも正確にはわからず、廃棄物や汚染水は増え続けている。また、避難を余儀なくされている人々も未だに救済されていないようだ。原発問題こそが、日本国民の安全のために政治が何をおいても取り組まなければならない課題だと思う。日本は自然災害の多い国だ。もし、また何かあれば、それこそ日本の存亡に関わる事態になるだろう。

2番の意味でも、いろいろある。コロナの感染爆発。2020年以来、世界中がこのパンデミックに悩まされている。ある意味で、世界はもうコロナ以前とは違ってしまった。各国が必死になって対策に取り組んでいるが、まだまだ収束の兆しが見えない。ワクチン接種についてもいろいろな見解はあるが、ワクチンが重症化を防ぐというのは、多くの事例から言えるようだ。スイスでも、来週からレストランの屋内、娯楽・スポーツ施設、不特定多数が集まるイベントなどの入場時のワクチン接種証明書提示に踏み切った。コロナ感染についてはわからないことが多い。だから、様々な情報が出回っている。最終的には個人の判断だが、感染症対策には、専門家の意見を参考にしながら、一人一人が社会的な視点からも考える必要があるだろう。

2番の意味では、「怒りが爆発する」などというのもある。日本人は一般的に、不愉快なことがあっても、それを出さずに溜め込む傾向があるように思う。時に強い不快な感情に囚われるのは、人間として当然のことだ。ただ、それをうまく昇華しないと消えることがないので、いつかは爆発してしまう。ただ奥に押し込んでしまわないで、その原因と向き合うことが、爆発をふせぐコツではないだろうか。もし、それが誰か人なら、その原因と思われる相手と話すのもいいし、あるいは、それができなければ、自分の気持ちと向き合って書いてみるのもいい。今湧いている感情、原因と思われること、どうしたいのか、などなど書いてみると、案外収まってくるかもしれない。どうしたらいいのか、何か案が浮かぶこともあるだろう。書くことは、自己カウンセリングになるように思う。

もう一つ思い浮かんだ言葉は、「爆発的な人気」。芸能人などもそうだが、それを得た人には、良し悪しのような気もする。爆発的な人気は、一時の爆発が終われば徐々に収まっていく。流行りはいずれ廃れるし、人の心は移ろっていくもの。人気のある時、うまくいっている時には人は寄ってくるが、落ち目になった時には離れていく。人気の芸能人などが、案外お酒などに溺れるのは、 いつまでこれが続くのだろうかという不安があるからかもしれない。よく、芸能人でなくても人気のある人に「あなたに付いていきます」などという人がいるが、ある日後ろを振り返ったら、その人が消えていたりして。爆発的な人気を博すより、静かで着実な支持の方が安心かもしれない。