スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

眠りの不思議

今週のお題「眠れないときにすること」

人生のおよそ3分の1近くは、眠りの中で過ごしている。考えてみると不思議なことだ。言ってみれば、多くの時間を無意識の世界で過ごしているわけだ。そして、この時間は本当に大切な時間である。眠っている間に、心と身体のあちこちが修復されているのだろう。眠りは生命活動を維持するために欠かせないものなのだ。

けれども、いつもすっと快適に眠りに入れるわけではない。あるいは、夜中の2時、3時に目が覚めて、それから眠れなくなってしまうこともある。眠ろうとすればするほど、目が冴え渡り、考えなくてもいいことが頭の中をぐるぐる回る。翌日に大事なことが控えている時に限ってそんなことが起こりがちだ。無意識に緊張しているからだろう。明日は人前で話さなければならないとか、そのために頭をクリアにしておかなかればならない時など困ってしまう。また、寝不足だと当然見た目にもひびいてくるし。

さて、そんな時にはどうするか。ひとまず目を瞑ってみる。規則正しく息をしながら、吐く息と吸う息に集中する。頭をぼんやりさせながら、気持ちを朦朧とさせて、身体から意識が出て行くようにイメージする。眠りに入れなくても、目を閉じて、ただただ無意識に揺蕩うようなイメージ。眠ったという感じがしなくても、夢のようなものを見だしたらシメタもの。夢を見てたのだから、いくらかは眠ったのだろうと思う。とりあえず、身体を横にしているだけでも休息になっているのだと思うことにする。

翌日少しゆっくりできる時は、思い切ってベッドを離れてソファに座る。蜂蜜入りのホットミルクを飲むと眠気を催すと聞いたことがある。だが、この乳糖不耐症の身には向かない。だから、蜂蜜入りのハーブティーを片手に、ショパンのノクターンを聴きながら、ただぼんやりする。ここで、考え出したらダメだ。頭が冴えてくる。照明は落とし、意識を彷徨わせる。それでも眠くならなかったら、今度はノートを出して思いを綴る。手を動かしているうちに疲れてきたら、その機を逃さずベッドに入る。

昔、半年近く眠れない時期があった。当時はそんな言葉はなかったが、今思えば「バーンアウト」というものだったのかもしれない。あれはキツかった。ストレスは身体に良くない。溜め込まないことが大事だ。そうしないと不眠症にもなってしまう。ちょっと気分が落ちている時は、何をおいても寝るのが一番。ある女優さんの言葉が印象に残っている。その人は女っぽい役柄もこなすが、性格は男勝りの人らしい。「私ね、いやなことがあったら寝ることにしているの。ぐっすり眠ったら、翌朝はいやな気分もなくなってる。だから、クヨクヨしてる後輩を見たら言うのよ。今日は早く寝なさいって」。たしかに言い得て妙だ。眠るが勝ち。