スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

Steins;Gate シュタインズ・ゲート

ネットフリックスから、いくつかの番組配信終了のお知らせが来た。そのひとつに、SFアニメシリーズ「シュタインズ・ゲート」があった。このアニメは、クラブハウスの哲学系の部屋で、主催者の方が紹介していたのを聞いて面白そうだと思い、1年くらい前に試聴した。とくに、世界線という言葉と、それを移動するという発想に興味を引かれたのだ。ドラマのサムネイルの部分には「自称マッドサイエンティストと仲間たちが、過去へとメールを送信できるタイムマシン『電子レンジ(仮)を偶然発明するが、それが大きな悲劇を引き起こす」とある。2011年の作品で、25エピソードで完結だ。

そのアニメ独特の絵柄と10代の若者たちの言葉遣いと態度には、ちょっと慣れを必要としたが、やがて気にならなくなって、物語に引き込まれていく。発想と展開が面白いからだ。つまり、軸になっている「世界線を移動する」という考えが、視聴者を最後まで引っ張っていく。もう1年も前に観たもので、詳細は覚えていないが、ざっと言えば次のような話だったと思う。

岡部倫太郎という大学生で天才科学者の若者が、秋葉原にある「未来ガジェット研究所」という部屋を拠点に、仲間とおかしな発明を繰り返している。そこには、彼の幼馴染の少女も出入りしている。彼女は倫太郎に全幅の信頼を置いて慕っていた。ある日、彼はその少女とタイムマシンの講義が行われる会場に向かうが、折りしも、講義会場の屋上には人工衛星のような物体が墜落していた。倫太郎は、その会場で天才少女に出会う。少女はある事件に巻き込まれるのだが、紆余曲折を経て(亡くなったはずの彼女が生きていたり)、倫太郎たちの仲間として研究に加わる。墜落していた物体はタイムマシンだったらしい。また、携帯を研究所の電子レンジに入れると、携帯メールが時間を超えることが判明。というふうに、何人かの登場人物を交えて話がいろいろ展開していくのだが、ちょっと感動的だったのは、主人公が仲間を救うために、必死で世界線を何回も移動するところ。現在の世界線上では、幼馴染の少女が死んでしまうことに。それを回避するために、倫太郎は別の世界線に移るのだが、どの世界線に移動しても、この運命は回避されない。ひとつだけそれを避ける世界線を見つけたのだが、今度はそれは愛する別の仲間の命がなくなる世界だった。苦悩する倫太郎。彼は二人とも失いたくないのだ。そして、彼が選んだ道は。。。

私たちは誰しも一度は、あの時「もう一つの道」に行っていたらと思うことがあるだろう。パラレルワールドという言葉があるが、可能性の数だけ世界は同時に存在しているということか。例えば、携帯電話のない時代、あの時間に家にいたならば、ちょうどあの電話を受け取っていて、運命が変わっていたかもしれないとか、あの時電車が遅れなければ、約束に間に合って違う展開になっていたかもしれないとか。また、逆に、あの時あの場所を通ったばかりに災難に遭ってしまったとかいうのもあるだろう。やがて、その災いが幸いに転じることになったという展開もあるかもしれない。

世界線の移動について考えながら町を歩いていたせいか、ふと見慣れた風景に違和感を感じて、ここは何処?という思いが一瞬頭をよぎった。と、まあこれは笑い話にしておこう。