スイス山里COSMOSNOMADO

紅葉世代の異文化通信

是枝裕和監督映画「誰も知らない」をまだ観ていないわけ

今、チューリッヒのXENIXという映画館で是枝裕和特集をやっている。是枝監督の作品はスイスで人気があって、新作は必ず封切られるし時々特集も組まれる。15年ほど前だったか、プロモーションで来瑞の際に、活動に携わっている文化交流団体で監督を囲む会をしたこともあった。映画作りへの情熱を秘めた真面目な方という印象だった。

是枝監督の作品は、ほどんど観ている。中でも好きな作品の一つは「ワンダフルライフ」だ。テーマも、ドキュメンタリータッチの作り方も好きだった。やがて、だんだんとテーマが子供と家族を中心とするようになっていく。「そして父になる」はよかった。是枝さんは子供を使うのが上手いという定評がある。現場で子供たちと馴染んでいって、自然な演技を引き出すのだそうだ。「誰も知らない」もそうだったという。主役の14歳の少年は、カンヌで主演男優賞を取って、世界を驚かせた。それだけ有名な作品なのに、実は私は観ていない。観る機会は何回もあったはずなのに、観ていないのだ。それは、あまりに辛いテーマで、長時間の鑑賞に耐えられるか自信がないから。親の子供達への虐待のニュースを聞くたびに胸が痛む。なんとも言えない気持ちで心臓の辺りがキュッとなる。生みの親にしろ育ての親にしろ小さい子供にとってはその世界が全てなのに。子供時代に受けた傷は、なんらかの形で人生に残るものだと思う。

もうかなり前のことになるが、虐待のニュースを見聞きしていた頃に書いた歌がある。自分なりにはラップ調のつもりだったけれど、息子には「ママ、ラップってちょっと違うよ」と笑われてしまった。私には、歌詞のテンポにはラップのノリが一番合うように思えていたのだがなあ、でも、やっぱり違うかなあと、実際にラップを聴いて思ったことではある。時々詞を作って楽しんでいる。曲を作ってくれる人がいれば一番いいのだが、見つけるのが難しいので、自分で適当に歌詞に合わせて歌っているわけだ。歌のタイトルは「なんで、なんで、なんで。。。」

 

 オギャーっと生まれたその日から 父さん、母さん、僕らのすべて

 寒さ防ぐも あんたたちしだい 

 暑さかわすも お二人しだい

 食べ物くださるカミサマさ

 歩き始めたその日から あんたらの後なら どこでも行ったよ

 みーぎに行けっちゃ 右向いて行ったよ

 そこで待ってろっちゃ ずっと待っていたよ

 全知全能のカミサマさ

 だから 愛してるって見せてよ 母さん

 いいとこあるなって褒めてよ 父さん

 たまには 可愛いって抱きしめてよ 母さん

 どうして 素直に見せてくれないの 

 どうして はっきり言ってくれないの

 なんで、なんで、なんで、、、 

 なんで、なんで、なんで、、、

 家族よりわたしなんて 言わないでよ 母さん

 おまえのせいだなんて 言わないでよ 父さん

 産んでくれたの あんたたちじゃないの

 ちっちゃなボクらにゃ あんたらがすべて

 なんで もすこし 待ってられないの

 なんで、なんで、なんで、、、 

 なんで、なんで、なんで、、、

(セリフ)ボクらがもう少し大きくなったら、あんたらの辛さもわかるようになって、そしたらこんどはギュッと抱きしめてあげるのに。もう少しなのに。。。

 

cosmosnomado 画