スイス山里COSMOSNOMADO

紅葉世代の異文化通信

メモログ3

また一週間が過ぎた。今日は、今週ちょっと心にとまったことをメモしてみたい。

1.  久しぶりにコンサートに行った。チューリッヒには、Tonhalleという大きな音楽堂がある。そこでの演奏会だった。タイトルは「千夜一夜物語 <シェヘラザード>」というもの。ムソルグスキーの「モスクワ川の夜明け」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、そして最後に、眼目となるニコライ・リムスキーの「シェヘラザード」交響組曲が演奏された。私は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がとても好きなので、聴きに行った。スイスの若き新進気鋭のピアニスト、シモン・ビュルキの演奏が素晴らしかった。万雷の拍手で、2回もおまけの演奏をしてくれた。ロシアの曲だったからか、ふっとあの戦争のことが頭をよぎる。才能も将来もある若者が、誰かの思い込みと権力欲のために戦争に駆り出される理不尽に胸が詰まった。

2.  新聞に、デジタル疲れのエッセイがあった。まさに、現代人のメンタル問題の大きいところだ。筆者は、すぐに返事をしないと良心の呵責を感じて、疲れ果てていると書く。例えば、友達が電車待ちの時間に、チョコっと他愛のないことを書いてくる。それでも、返事をしないと無視しているようで悪いかなと思うから、チョコチョコと時間を取られる。少し返信が遅れた時は、返事が遅くなってゴメンと書いてしまう。グループチャットなどは、それぞれがいろいろ送るから、返信が大変だ。わかる。私が入っているあるスイス人のグループも、ワッツアップでやり取りがある。必要事項の伝達だけならわかりやすいのだが、個人的な休暇の写真も混ざっていて、それにまた「楽しんで」というそれぞれの反応が入る。すると、伝達チャットを探すのに、だいぶスクロールしなければならなくなる。誰かの提案で、グループの伝達チャットと、お喋りチャットの二つのアカウントが出来た。でも思うのは、みんな伝えたいことが沢山あるのだなあ、ということ。スイス人は旅行好きだ。秘境に行ったとか、珍しい写真を見せてもらうなら興味深いだろうけど、ただ、景色のいいリゾートビーチでカクテルを飲んでいる写真を送ってもらってもね、というのはある。

3.  6月14日には、大事な国民投票がある。スイス国民党 (SVP) の「持続可能性のイニシアティブ」だ。「1000万人のスイス反対 」とも言って、移民の制限を提議するイニシアティブである。社会党 (SP) の連邦参事で、司法大臣のヤンス氏は、この「有害で危険な」発議に警鐘を鳴らしているという。新聞にそのインタビュー記事が出ていた。印象的だったのは、もしこの発議が国民投票で賛成多数になれば、スイスのブレグジットになりかねないと言っていることだ。スイスの人口増加はめざましい。それは、長年スイスに住んでいる私も実感するところである。昔を知っている者にとっては、ちょっと人が多過ぎじゃない?と感じるのはよくわかる。チューリッヒなど大きな都市の住居不足は深刻だ。SVPは、それを煽る。この党は、国民の感情的な部分に火をつけるのが得意だ。だが、この住宅不足は、人口が増えていることによるよりも、銀行や保険会社が住宅で儲けることに目を付けているというのにもあると思う。このことについては、時間のある時にじっくり考えてみたい。いずれにしても、6月14日は、EUとの関係で、スイスの命運を決める日になるかもしれない。