スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

ひとつの医療体験記

耳鳴りのことでお医者さんに行ってきた。チューリッヒ大学病院である。いろいろ興味深かったので、経緯を書いてみようと思う。

まず、こちらには日本の国民健康保険のような制度はない。各自が民間の保険会社の保険に加入するシステムだ。保険会社も様々ある。いろいろモデルがあるが、まず、プライベート、セミプライベート、一般に分かれる。これは、入院の際に個室か2人部屋か4人部屋ということだったが、運が良ければ一般でもその限りではないらしい。月々の保険料は、プライベートから一般へと下がってくる。ただ、プライベート、セミプライベートの利点は、医者を選べるということ。医者を自分で変えることができる。スイスの健康保険料は大変高い。それで、若い人やあまり病気に縁のない人ならば、年間たとえば2千フランまでは自己負担で、その分月々の保険料は安いというプランに入る人も多いらしい。つまり、ほとんど医者に行かないから。だが、病気がちな人や年配者は、最初の自己負担の上限は低いが月々の保険料は高いプランに入るようだ。よく医者にかかれば、2千フランはすぐに超えてしまう。それにしても、健康保険料の家計への負担は大きい。

耳鳴りを治す術はないらしい。私の場合は、耳鳴りというよりも頭鳴りである。特に意識しているわけではないが、いつも鳴ってはいる。もう長いこと続いていてかなりひどい時もあるので、ホームドクターを通して大学病院の専門科に予約を取ってもらった。実際に診療日の案内が来るまでには結構時間がかかる。やがて、その日が来た。まずは、様々な角度から聴力検査をする。1時間近くだったろうか。前にも一般の耳鼻科で診てもらったことはあるが、さすが大学病院の専門科、かなり詳細に渡るものだった。そして、その後に医師との面談。これは問診と耳の器官の検査だ。とても親切な女医さんで、じっくりと時間をかけてくれる。聴力の減退もほとんどなく、また器官的にも異常は見られないということで、理学療法と心理療法を処方された。

診療の後は、専門医はホームドクターに診断レポートを送るが、私にもそのコピーを送ってもらった。先日、第一回目の理学療法に行ったが、そこでも女性の理学療法士に丁寧に診てもらった。本格的な治療は次回から始まる。へえ、なるほどと思ったのは、彼女もまたあの女医さんに診療レポートを書くということ。一人の患者について医師たちが病状を共有し、また、本人も希望すればその報告書を読むことができるというのはありがたい。ふだんめったに病院に行かない人間なので、その意味では、今回のことはいろいろと興味深い体験になりそうだ。