スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

石狩鍋とキムチ鍋

今週のお題「最近おいしかったもの」

 

ついこの間、日本人の盆踊りグループの初練習と新年会があった。総勢15人ほどが集まっての新年会で、一人一品持ち寄りの集まりなので、ご馳走がずらっと並ぶ。皆んな料理上手で、煮物やサーモンのサラダ、和え物、工夫を凝らした野菜や肉の料理などなど。お正月らしく、つきたてのお餅を用意してくれた人もいる。メイン料理は、恒例の二つの鍋物。石狩鍋とキムチ鍋である。ここ数年、これが主役になっていて、この鍋の元祖の地元メンバーが買い出しから仕込み、そして当日の鍋奉行を務めてくれる。彼女たちを見ていると、本当に甲斐甲斐しくて、まさに大和撫子とはこのことか、と思う。もちろん、スイス人女性にも甲斐甲斐しい人はいるのだが、何というかちょっとニュアンスが違うのだ。この鍋奉行たちは、自分のことは後回しにして、皆んなに取り分けてくれるし、よく気がつく。威勢がいいのに出しゃばらない。大和撫子ここスイスにあり、である。石狩鍋もキムチ鍋もとても美味しかった。

 

 

お腹がいっぱいになると、今度はカラオケが始まる。これも、マイクを持ってきてくれる仲間がいる。今は便利になったものだ。スマートフォンのカラオケと繋げて歌えるようになっている。思えば、昔々はそんなものはなかったから、カラオケパーティーをするときは、装置を持っている日本か韓国のレストランに行ったものだ。

この十数年で、すべてが急速に変わっていった。海外に暮らしていても、日本がぐっと近くなった。スイスのスーパーにも、お醤油は普通にあるし、アジア食品(生鮮以外)のコーナーがあって、日本の物も一通り置いてある。寿司ブーム以来、関連食品がぐっと増えた。デパートには、日本的な器もけっこう置いてあるし、わざわざ日本から買ってくる必要もなくなった。もちろん立派なものというわけでもないが、それでも重いものを持ってくる手間と労力を考えれば、便利で助かる。また、インターネットの普及で、居ながらにして日本と繋がれるようになった。日本のお友達とZoomで顔を見ながらお喋りができるなんて、昔は思いもよらないことだった。ただ、これらすべては、世界が災害もなく戦争もなく、ちゃんと機能しているというのが前提でのこと。たとえば、ウクライナの戦争で飛行機のルートは変わったし、もしコンピューターに世界的な問題が生じれば、全てアウトである。また、福島の原発事故では、飛行機が日本まで飛ばなくなったし。コロナの時も渡航には制限があった。あの時は、改めて日本と欧州の距離を感じた人は多かったと思う。そういう意味では、距離的に離れていても繋がれるというのは、全てが機能しているという前提があってのことなのだ。すべては、不安定な均衡の上に立っている。やはり、身を置いている地元と繋がる生活は大事だと、改めて思うこの頃である。