スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

雨の日の過ごし方

今週のお題「雨の日の過ごし方」

今年の5月はやけに雨が降る。気温も上がらず肌寒い日が続いている。去年の5月とは大違いだ。去年はお天気が良かったような気がする。コロナの第一波の時だったから、それは助かった。お天気が悪いと気持ちも沈みがちになるからだ。ヨーロッパでコロナ禍が始まって、もう一年以上になる。去年は、3月半ばからひと月ほどロックダウンが続いた。当時は、まだこの新しいウイルスについてまだまだわからないことも多くて、先行きが不透明だった。そんな時に、今年のように雨降りの肌寒い天気が続いていたら、みんなの気持ちももっとめげていたことだろう。一年が過ぎて、このコロナウイルスのこともだいぶわかってきた。何よりも、ワクチンの接種が進んでいて、希望が見えてきたと感じる人も増えているようだ。レストランにとっては、この5月の雨降りは有難くない話だ。というのは、屋外スペースに限り解禁されたのだが、お天気のいい日が少ないとお客も来られないというわけだ。

さて、雨の日の過ごし方だった。コロナ感染が広がってからは、会合もZoomに切り替わったし、特に雨を押して外に出なければならない用事もないので、家で過ごしている。片付けたいものはいろいろあるのだが、片付けは晴れた日の方が捗る。日中暗いと、どうもやる気が起きないのだ。雨の日は、書き物をしたり本を読んだりするのに向いている。いま読んでいるのは、ノルウェーの作家ヨースタイン・ゴルデルの「ソフィーの世界」だ。1991年に出版され、各国語に翻訳されてベストセラーになった作品だという。この本のことは知っていたが、手に取る機会がなかった。それがひょんなことから、30年後のこの雨の5月を慰めてくれることになる。もうすぐ上巻が終わるところ。18世紀のデイビット・ヒュームまで来た。面白い。つくづく思うのは、このソフィーのように、14、5歳の時にこんな哲学の先生に出会っていたら、どんなに幸せだったろうにということだ。日本の中学校に、哲学の時間なんてあっただろうか。正確には思い出せないが、なかったように思う。高校には、倫・社という授業はあったと思うが、あまり面白くなかった記憶がある。ノルウェーにそんな科目があるのかどうかはわからないが、ソフィーも学校で授業として哲学を習うわけではない。ある不思議な人物から教えてもらうのだ。哲学講義がファンタジーミステリーのタッチで進んでいく。作者は生徒に哲学を教えるのに、面白い方法を考え出したものだと思う。大人が読んでも、其処此処で拾い聞きした哲学の知識を体系的に整理するのに役にたつ。あと何日か雨が降ったら、読み終わるだろう。

今年の6月はどんな天気になるのだろうか。スイスの6月は比較的晴れる日が多い。昔、日本にいた頃、ジューンブライドという言葉を聞いてもピンとこなかった。だって、日本の6月は梅雨の季節。わざわざ雨の季節を選んで結婚式を挙げるのもご苦労なことだ。けれども、こちらで暮らしてみてわかった。ヨーロッパでは6月は夜も9時頃まで明るくて、何となく開放感のある、私の好みで言えば、一年で一番気持ちのいい季節なのだ。もちろん、緯度によっても違うから、一口でヨーロッパは、と括るのは大雑把にすぎるけれど。この言葉の語源は他にもあるらしいが、この解釈には実感として納得する。それはともかくとしても、早くお日さまの顔が見たいものだ。

 

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