スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

春の香り

今週のお題「あったかくなったら」

今年に入ってから暖冬だと油断していたら、急に寒くなって零下になった。もしかしたら、これから本格的な寒さがやって来るのかもしれない。

遠い昔、こちらに来て初めて迎えた冬の寒さは厳しかった。零下10度くらいになっただろうか。もう少し寒かったかもしれない。東京育ちの私は、零下など経験したことがなくて寒さに震えた。外出の時は、厚い外套(そう、外套というのがその時の私の感覚にはぴったり)を着込んで、暖かい手袋をはめて、ブーツを履いての重装備。けれども、家の中は暖かいので、かえって東京の冬より過ごしやすいことを発見した。こちらの家は、断熱がしっかりしているのだ。東京の家の造りは、こちらに比べると華奢で、熱を逃してしまう。冬の朝は、布団から出るのが辛かったものだ。そんなわけで、子供の頃は春になるのが待ち遠しかった。

沈丁花の香りに春の兆しを感じて、何とはなしに心が弾んだっけ。そういえば、こちらに来てからは、沈丁花の香りに出会うことがなくなった。どうしてかはわからない。日本で住んでいた地域には、沈丁花の植え込みが多かったのだろうか。とにかく、あの香りが懐かしい。

そうしたら、日本に帰った時に「花風」というお線香を見つけた。銀座の日本香堂という会社の製品である。花の香りのお線香が何種類もある。その中に沈丁花があったので、買ってきた。その他に白梅と蓮華も。線香というと、仏壇やお寺のイメージがあって、抹香臭いという人もいるが、そんなことはない。お線香は部屋の空気の浄化にもなる。また、木炭には浄化作用があると言われるが、マッチを擦っただけでも、小さい空間だったら消臭になる。こちらの人はよくキャンドルを灯すが、火の浄化作用というのもあるのかもしれない、と私なりには思う。さて、今の季節は、時々白梅のお線香を焚いているが、もう少ししたら、沈丁花にしようと思っている。

このところの「時」の進み具合で行くと、もうあっという間に2月になり、今よりもっと日も長くなって春が近づいてくるだろう。あったかくなったら、友達と外で会って、湖沿いを散歩したりカフェのテラスに座ってお茶を飲んだりしたい。こちらでは、少しでも陽が照ると、皆さん外に座ってお茶やランチを楽しんでいる。冬は、道ゆく人の表情も寒さゆえに固まっているが、春になって木々が花を付けるようになると、何とはなしに人の心も浮き立ってくるようだ。冬至から一ヶ月、まだまだ冬の真っ只中だが、昼は日に日に長くなってきている。春よ来い、早く来い。