スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

品位に欠ける政治と社会、でも未来に賭ける

今週のお題「かける」 テーマが変わってしまったけれど下書きにしまっていたのでアップします。

 

日本語は、同音異語がたくさんあるから面白い。今週のお題「かける」という語もそうだ。掛ける、架ける、欠ける、賭ける、駆ける、描ける、書ける、などなど。漢字があるから一目瞭然だが、ひらがなだけだったら前後の文脈を見なければならない。

最初の「掛ける」は、よく使う言葉だ。コートを掛ける。腰を掛ける。数字を掛ける。書を掛ける。そうだ、電話を掛ける、話し掛ける、声を掛けるも。これは、こちらから相手に向かって手を伸ばすということだろうか。

橋を架ける、という言葉はよく聞く。物理的に橋を架けるだけでなく、比喩的な意味で使われることも多い。たとえば、人と人の間に橋を架ける、二つの国に橋を架ける、二つの文化に橋を架けるなど。「両文化の架け橋になりたい」とはよく聞く。私もそう思っていた一人だ。実際、異文化の中で暮らし始めて様々な違いに遭遇したが、第一の難関は言葉である。これは大きい。なんとしても橋を架けないとコミニュケーションが取れない。自分がある程度できるようになると、今度は橋渡しの仕事になる。通訳、翻訳、異文化交流。こちらの人に日本の文化を知ってもらいたい。出てきた国への後方支援だ。日本へ好意を持ってもらうことは、故郷のなんらかの役にたつと思った。日本語と日本的考え方への導入講座も開いたことがあった。大きく言えば、東西両文化が理解しあって、それを活かしあったら世界は良くなるのではないかと考えていたから。そして、12年前の3月にあの震災と大津波が起こった。福島原発では、地震と津波による電源喪失でメルトダウンが起こってしまった。その後の経緯は皆の知るところである。こちらの在留邦人たちは、いち早くチャリティーコンサートや募金活動を繰り広げた。日本人だけではない、スイス人たちも行動を起こした。皆で一丸となって日本を救おうと動く中、ふと日本を見ると、この大災害を政権返り咲きに利用しようとする政治屋たちがいた。品位に「欠ける」ことだった。

品位に欠ける、これは、この10数年の日本の政治を見ていて、思わず出てくる言葉である。「TPP絶対反対、嘘つかない、ブレない」というキャッチフレーズで政権に返り咲いた党がやったことは、全くの真反対のこと。日本の農業を売り渡す政策に邁進し、嘘を平気で吐いて公文書を改竄するわ、原発問題はスルーして自己利益誘導の東京オリンピックに血道を上げるわで、一部の恩恵を受けた層を別にすれば、日本全体を貧しくしてしまった。トップに立つ人間たちに品位が欠ければ、社会全体にも品がなくなってくる。いわゆる勝ち組が幅を利かせ、誠意に欠ける、思いやりに欠ける発言をする。まさに「欠ける」のオンパレードだ。

けれども、つい最近友達が教えてくれて、ある若いアーティストの歌を聴いた。藤井風という26歳の青年の「帰ろう」という歌だ。やがて来るこの世を去る日を見つめて、物質的なことに幸福を求めない生き方を謳っている。未来をこういう若者たちに賭けたい。

https://www.youtube.com/watch?v=goU1Ei8I8uk