スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

やっぱり紙の本には馴染みがある

今週のお題「読みたい本」

このお題で第二弾。前回、私の本購入の条件は、電子書籍になっていること、と書いた。理由は簡単で、海外に住んでいるから。まったく便利な世の中になったものだ。昔は、日本に帰省するたびに、必ず本のことでは一日費やした。まず本屋さんへ行って、面白そうなものをまとめて何冊も購入して、段ボール箱に詰めて、自転車に載せて郵便局に持って行って、船便で送ると言う作業。本は重いから、もちろん航空便では送らない。すぐに読みたいものはトランクに詰めたが、その他は悪くなるものでもないし、1、2ヶ月くらい掛かる船便でも別に構わなかった。当時の船便は、シベリア経由かアフリカ経由だったと思う。

海外に住んでいて何が恋しかったかと言えば、ずばり日本語の情報である。今でこそ、インターネットで何不自由なく日本語が読めるが、40年近く前はそうはいかなかった。日本を出てしまえば、日本語に触れることはほとんどなかった。日本航空がまだチューリッヒにオフィスを構えていた時代は、そこに行くと週一回日本の新聞が読めた。直行便はたしか週一だったと思う。やがて、朝日新聞の衛星版が出来て、日本食料品店などでは買えるようにはなったが、高かったので毎日読むわけにもいかなかった。それで、当時は、冷凍食品をまだ親切に古い新聞紙で包んでくれていたから、家に帰ってからそれを開いて、食い入るように読んだ。たとえそれが、女性週刊誌の広告であっても。それだけ、日本の文字と情報に飢えていたということ。友達たちに聞いてみたら、みんなもそうだったという。

パリには、大きな日本の本屋さんがあった。日本が恋しくなると、パリに行った。スイスからパリまではそう遠くない。ジュネーブからはTGVで3時間ほど、バーゼルからも4時間ほどだ。パリという街の魅力もあったが、私にとっては、日本食を食べたり、本屋さんへ行ったり、ちょっとしたリトルジャパンの雰囲気も楽しめる所。オペラ座界隈は、言ってみれば日本人街である。本の値段は日本より随分と高かったけれど、それでも、必要なものは買ったものだ。

電子書籍が手に入るようになってから、興味ある本が簡単に手に入るようになって、それはありがたい。けれど、やっぱり本は紙の方が馴染みがある。ページを繰って、気になったところにはまた戻ったり、動きが自由にできる。書き込みもできるし。Kindleなどにもいろいろな機能があるらしいが、紙の本に比べて、私にはやっぱり不便だ。紙の手触りも好きだし。本は情報伝達でもあるけれど、装丁も含めて、手に取れる物理的な作品だ。