スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

お餅の季節

今週のお題「餅」

お餅といえば、やはりお正月、というかお正月といえばお餅である。子供時代を思い出す。鏡餅は、父が準備して飾りつけたものだ。私が子供だった頃は、コンビニなどはなかったし、三が日は商店街もお休みで、母親たちは年の瀬におせち料理を作って、三日間の食事を用意した。いろいろとあったが、なかでも母の旨煮の味は忘れられない。三が日の朝は、みんな揃ってお膳を囲んで、お雑煮、昆布茶、黒豆、田作り、蒲鉾やお生酢その他諸々。お餅は、おやつにも食べた。一番好きだったのは辛味餅で、大根おろしにお醤油をかけて餅に絡めたもの。甘いお汁粉よりも好きだった。子供の頃から、辛党の気があったのかもしれない。

好みというのは面白いもので、必ずしも親から子に直接遺伝するものでもないらしい。というのは、息子はこちらで育ったくせに、大福とか白玉とか餅系のお菓子が好きなのだが、私は子供の頃から洋生菓子の方が好き。いつでも食べられたわけではないけれど。大福などは、こちらに来てから食べるようになった。つまり、どちらかといえば郷愁ゆえか。こちらでも、和菓子を作っている方がいる。バザーなどに出品していて人気のスタンドだ。そんな時に息子のお土産に買ったり、日本食料品店の冷凍ものを買ったりした。ある日、息子の寝顔を覗いていたら「お団子〜」と寝言を言った。小さい息子を連れて里帰りしていたから、その時に覚えた味である。そういえば、母は大福やお団子が大好きだった。そうか、隔世遺伝か。待てよ、小さい時に食べて美味しかった味は残るのかもしれない。あのモチモチ感が好きみたいだ。でも、母が好きだったということは、私も食べる機会はけっこうあったはずなのに、餡子ものはそんなに好きでもなかった。ということは?やはり持って生まれた好みがあるのかしら。そんな私が、一度腕を振るって?お団子を作ってみた。息子は楽しみにしていたのに期待が外れて半泣きの顔。本場のお団子とは違っていて申し訳ない。幼い頃のことだが、今でも思い出すと笑ってしまうというか、胸がキューンとしてしまう。以来、白玉粉に切り替えて、餡子をかけたり、甘辛醤油にこちらのMeizenaというとうもろこし粉でとろみをつけたり。それは、いつも喜んでくれたものだ。私はと言えば、苺のショートケーキが大好きで、日本で食べるのを楽しみにしている。こちらには薄力粉がないので、どうしても食感が重くなってしまう。日本のケーキはふんわりしていて美味しい。こちらのしっかりしたケーキも美味しいには美味しいが、私にはちょっと重くて甘すぎる。

もうすぐお正月がやってくる。お餅を買いに行かなくちゃ。値段はかなり高いが、日本食料品店で手に入る。少なくとも、元旦にはお雑煮を作っているし、お餅を焼いて甘辛両刀で食べたりもするので。日本にいたら、お餅にはあまりこだわりがなかったかもしれない。が、海外生活ゆえに懐かしさがあるのだ。こちらの日本人学校では父兄の手を借りて餅つき行事をしていた。今も続いているのかどうかはわからないが。それから、もうずいぶん昔のことになるけれど、チューリッヒの東洋美術館で日本祭りをした時には、日本人会の方たちが舞台の上で餅つきを披露して好評を博した。やはり、お餅は日本的なのだ。