スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

クラブハウスの栄枯盛衰?

クラブハウスという音声SNSがある。2020年にアメリカで立ち上げられて、日本では2021年1月から大きなブームを巻き起こしたという。ちょうどコロナで自宅待機や外出自粛の時期だった。日本上陸当時は、招待制という特別感、有名人も参加していて直接話せるという興味もあって、多くの人の関心を集めたらしい。創立者は、日本での利用者急増を予想してなかったらしく、アプリの日本語での対応に追われたとも聞いた。クラブハウスの説明は、基本英語である。だから、最初は日本の利用者たちはそれぞれ模索しながら、互いに使い方を教え合うルームなどを開いていたようだ。

私は、2021年の4月から始めた。きっかけは、本当にたまたまのことである。こちらの日本人コミュニティーに、クラブハウスの招待券を差し上げます、という告知をしている人がいた。うん?クラブハウス?何それ?最初、ダンスクラブか何かと思ったが、読んでみて新しい音声SNSだというのはわかった。そこで、息子に、使ってる?と聞いてみたところ、アクティブには使ってないけど、一応アプリはインストールしていると言う。そして、僕が招待者になってアプリを入れてあげるよ、とサクサク進めてしまった。当時、私は遅ればせながらもデジタル元年を標榜していたので、ちょっと戸惑いながらも、ま、いいかと受け入れる。そして、恐る恐るプロフィールを書いて使い始めた。当時は、ホームラインに部屋(ルーム)が並んでいて、好きな時に好きなルームに入って、話を聞いたり自分も話したりできた。自分でルームを立ち上げるのも簡単で、たくさんの人たちの色々なルームがあって、覗いてみるのも楽しかった。あの時分は、ちょうど人が集まる催し物が出来なかった頃だ。音楽家が集まって遠隔操作で演奏をする部屋もあったりした。とても質の高い演奏で楽しませてもらった。また、仏教のお坊さんたちの部屋や、医療関係の人たちの部屋、話題のジャーナリスの方たちも参加して毎回論議する部屋など、かなり内容の濃い部屋も。あと、ビジネスのアドバイスをする部屋もあった。私は畑違いだが、主催者の方が感じがいいので、時々参加してみたりもした。また、ある若手の書道家の部屋には何百人も集まっていた。彼はかなり感情の起伏が豊かな人のようで、自分はクラブハウスに救われた、もう泣いて創業者に感謝するなどとも語っていた。そういえば、コロナが去った後はリアルが忙しくなったのだろう、とんとお見かけしなくなったが。もうクラブハウス中毒、住み込んでます、などと言う人もいたものだ。やはり、コロナの時期、みんなコミュニケーションに飢えていたのだろう。それに、なんでも出始めの頃は熱量が大きいものだ。最初はiPhoneのみの対応だったが、21年の夏頃からはAndroidにも対応するようになって、すでに入っていた人たちで歓迎の催し部屋もやっていた。みんなが、わからない人たちに教え合って、和気藹々とした雰囲気だった。考えてみれば、声ひとつで時空を超えて繋がるなんてアプリは目新しかったのだ。一方通行の音声発信はあっても、生で初めての人とも会話ができるなんていうのは画期的だったのではないか。中には、クラブハウスを通して結婚にまで至った人たちもいたらしい。また、クラブハウスの交流がきっかけで本を出版したとか、ビジネスに繋がったという話も聞いた。それだけ、最初の頃の熱気と繋がり感は大きかったということだろう。

けれでも、何かが流行ると必ず似たものが出てくるのは世の常。Twitterにも会話機能がついたし、他にも追随はあったのではないか。クラブハウスも招待制がなくなり、必ずしも本名を使う人ばかりではなくなり、最初の頃のどこかピュアな雰囲気から少しづつ変わっていったような気もする。その後ハウスが出来て、まあそこまではいいとして、それからまたまた機能が付け加わったり変わったり、複雑になってきた。しばらく使わない間にずいぶん変化して、今はかえって使いにくくなったので、あまり利用はしていない。どのくらいの人が残っているのだろうか。クラブハウスの創業者はどうやって収益を上げているのだろうか。経済的に行き詰まってはいやしないか。スタートアップ企業へのフォローはどのくらい続くのだろうか。ま、私が心配することでもないのだが、ちょっと気にはなったこと。久しく、ブームはもう去ったとも言われているし。

次々と新しいストリーミング機能やSNSが出てきている。そういった会社が生き残るにはなかなかに熾烈な戦いがあるのだろう。最近Spotifyについての新聞記事を読んで、ネットフリックスでドラマを観たから、余計にそう思う。