スイス山里COSMOSNOMADO

アルプスの山を眺め空を見上げながら心に映る風景を綴ります

スイスで食べる納豆の話

今週のお題「納豆」

スイスで納豆を手に入れるには、日本食料品店に出向いて冷凍品を買うのが普通である。だいたい3個入りパックで5フランくらいだろうか。今の日本円にすると、700円以上?ということは、ひとつ250円近くになるかな?もしかしたら、もっと高くなっているかもしれない。まれに、料理好きの日本人で手作りする人もいるのかもしれないけれど、私の回りでは知らない。

私は納豆が大好きで、日本にいる時はよく食べていた。納豆は身体にいいと言われている。ネギを刻んで入れるのが好きだ。ネギ類も身体にいい。辛子も少しだけ入れてお醤油をかけて混ぜる。それをあったかいご飯に載せて食べるのは最高だ。ついついご飯が進む。ここで大事なのは、美味しいお米で炊いたご飯である。昔の日本のお米は美味しかった。国内産のお米を優遇するために、輸入は規制されていたと思う。その後、規制が緩和されて、いわゆる外米が入ってきた。昭和の頃は、お米はお米屋さんで買うものだったが、スーパーでも売られ出すようになったのは、いつくらいからだったろうか。

本当は、毎日でも納豆を食べたいところだが、こちらではそうもいかない。美味しいご飯を炊いたときに、だいじにご飯に載せて食べる。日本食料品店では、日本のお米を売っているが、けっこう高い。やはり海外にいると、ましてや配偶者がスイス人となると、毎日ご飯を炊いて食べるわけではない。それに夫は、納豆は人が食べているのを見るのも苦手というので、最初のうちは遠慮していた。こちらは学校給食がないので、子供はお昼ごはんに家に戻ってくる。ウチの子は納豆が好き。だから、晩ごはんではなくて、夫のいないお昼には堂々と食べられた。普段は、イタリア米で日本のお米に似たものを使っていたが、その時はとっておきの日本米を炊いて。あったかいご飯に、納豆、焼き海苔、味噌汁、焼き魚、豆腐料理、こんなメニューは最高だ。そして、お醤油は日本食には必需品。今でこそ、MigrosやCoopなどのスーパーでも手に入るようになったが、来た当時はチューリッヒの日本食品店まで買いに行ったものだ。

食習慣というものは、国によって様々。数年来の日本食ブームで、お醤油を炊きしめた匂いや焼き魚の匂いも違和感なく受け入れられるようになった。今から30数年前、毎日ドイツ語学校に通いながら、午後は日本人観光客相手のお土産物屋さんでパートをしていた頃のエピソードをひとつ。お昼時に地下の小さな台所で簡単な料理をする同僚もいた。すると、ある日、隣のブティックからクレームが来たのだ。臭いからやめてほしいと。地下室から隣のお店に匂いが漏れていたのだった。日本人には懐かしの匂いも、スイスの人にはちょっとこれ何?だったのだろう。お隣は高級ブティック。幸い、匂いは上のお店には届かなかったかもしれないが、地下が、同じように店員さんの休憩室になっていたのかもしれない。それにしても、まだ日本人永住組も今ほど多くはなかった時代を思い出すと、なかなか感慨深いものがある。