今週のお題「絵本」
息子が小さかった頃、毎晩2冊ずつ絵本を読み聞かせるのが習慣だった。一番初めに読んだのは、「ノンタン」シリーズだったと思う。日本の知り合いの奥様が、息子が生まれたお祝いに松田道雄の「育児百科」という厚い本を送ってくださった。今のようにインターネットで情報の検索など出来ない時代だったので、とてもありがたかった。そして、その中に一緒に入っていたのが、「ノンタン」の絵本数冊。猫のノンタンの可愛らしい絵が印象的だった。あれは何回も読み聞かせた。ちっちゃな息子が私の隣にちょこんと座って絵に見入っている。今でもその光景が眼に浮かぶ。楽しい時間だった。
子供が生まれる前から、この子とは絶対に日本語で話そうと思っていた。けれども、私以外には日本語を話す人がいない環境で、どうやって言葉を身につけていくのか。子供の言語能力にとって、最初の一年はとても大事と聞いたことがあった。そこで、全ての動作に合わせて発話をしてみることに。たとえば、朝起きたら「おはようございます」、ブラインドを開ける時は「ブラインドを開けましょうね。いい天気ですね」などなど。赤ちゃんはまだ言葉を出せないけれど、耳には入っているはず。表情で反応もする。とにかく、こちらとしてはモノローグの感があるにせよ、よく喋った。乳母車で散歩しながら、目に入るものはよく言葉にしたものだ。日本という環境にいれば、周りから様々な日本語が聞こえてくる。でも、こちらではそうはいかない。だから、私が何人分も話すしかないわけである。そして。。。だんだんと、「ぎゅうにゅう、ネンネ」とか「ママ、いい子いい子」とか「ママ、Auto、きをつけて」とか喋るようになってきた。
絵本は、子供たちが言葉を覚えるのにはとてもいいものだと思う。もちろん、言葉だけでなく、豊かな感情や想像力も育まれるし、他者との関わりなども学んでいく。私は、ドイツ語の絵本も、ドイツ語では読み聞かせなかった。日本語の絵本が手に入らなかった頃は、図書館でドイツ語のを借りるしかなかったが、即興で日本語で読んでいた。やはり、ネイティブではない人の発音でドイツ語を覚えてほしくなかったから。やがて、福音館書店というお店が海外に定期的に絵本を発送してくれるというのを知って、そこに注文するようになった。それからは、原則毎晩2冊ずつ、二人並んで座って絵を覗きながら本を読むようになった。「こぎつねゴン」とか、「ずっとずっとだいすきだよ」とか、サンタさんの話とか。もう忘れてしまったが、たくさんの絵本たち。少し大きくなってからは、日本昔ばなしの他、アンデルセン童話とか、グリム童話も日本語で読んだものだ。息子は毎晩楽しみにしていて、自分で本を持ってきて私のところにやってきたし、私も楽しかった。この二人の時間は、自分で本を読めるようになるまで続いた。
子供はあっという間に大きくなっていく。今振り返れば、人生のしばしの間、子育てに軸足を置いた時間が持てたことは、貴重で幸せなことだったのだと思う。